ゼミで扱ったトピックの紹介
これまでゼミで勉強してもらった内容を幾つか紹介します。尚、私自身の研究内容とゼミで勉強してもらう内容は必ずしも一致しません。
グラフ理論
グラフ理論は離散数学の代表的な存在トピックで、オイラーの一筆書き定理、四色定理、結婚定理、最短経路問題の解法など、意味がわかりやすく面白い定理をいくつも学べます。基礎的な所を勉強している範囲では代数・幾何・解析の難しいことは使わないのでとっつきやすい話題でもあります。
組合せ論の雰囲気を知ってもらうのにとても良いのでよくゼミの教科書に選びます。代数・幾何・解析の難しいことは使わないので、数学が得意でなく学部で卒業してしまおうという学生にとっては、抽象的で難しい勉強をすることなく、面白い数学の定理をいくつも学べるので、やりやすいテーマかなと思っています。逆に言うと、代数・幾何・解析の難しいことを勉強できないので、抽象的で難しい数学を勉強したい学生にはいまいちかなぁと思います。
凸多面体の数学
凸多面体は、高校ではオイラーの多面体定理や正多面体の話をおまけ程度で学ぶくらいで、本格的に学ぶことはありませんが、数学では昔から調べられている大事な対象です。凸多面体の話は、大学で学ぶ‘『幾何学』と違い、小・中・高で勉強する多角形や立体図形の話に近い幾何の話になります。基本は線形代数の話ですが、部分空間そういった話が好きだった人には向いている(もしくは、そういう話が嫌いだった人には向いていない)と思います。
多面体は、個人的には学生さんにも親しみやすい話題だろうと思っているのですが、学生さん様子を見るとそうでもなさそうです。いままであまり考えていなかった線形代数の幾何的側面に戸惑いがちなことと、多面体の理論の基礎の部分は、直感的には当たり前に感じることを頑張って証明する感じになってしまい、新しいことを学んでいる感じがせず、退屈なのかもしれません。
一方で、基礎の部分を乗り越えると、平面に多面体をゴリゴリお絵かきできるようになったり、中に入っている格子点の数から体積を計算したり、色々と楽しい話ができるようになり、修士論文の研究テーマもわかりやすいテーマに取り組めることが多いです。まあ、基礎の部分が退屈で難しく、基礎を乗り越えると具体的で楽しい話になるのが数学のどの分野でもだいたいそうなので、数学の宿命なのかもしれません。
可換環論
以前の職場では、他の教員との専門の兼合いから代数のゼミをするのは避けていたのですが、最近はときどき代数のゼミもしています。可換環は二つの側面があって、一つは『一般の環の基礎的な場合になっている』という抽象代数的な側面、二つ目は『多項式を代数的に扱う際の道具』という意味でこれは色々な具体的な問題を解くのに役立ちます。前者が好みの人は抽象可換環論を、後者が好みの人はグレブナー基底などの具体的な多項式計算の話を学ぶことが出来ます。
学部の環の授業の続きのような話となり、全く新しい考え方を学ぶわけではないという意味で、勉強はしやすいと思います。もちろん、学部の代数の授業が苦手だった場合は別ですが・・・。