研究内容紹介

代数的と組合せ論の境界分野で研究しています。もう少し詳しく言うと、可換環論(主に多項式環)の話を使って組合せ論(凸多面体や単体分割)の話を調べたり、逆に、組合せ論の道具を使って多項式環のイデアルの性質を調べる研究(こういう研究は組合せ論的可換代数などと呼んだりします)をしています。

凸多面体に関わる数学

 多面体の研究は、古くはギリシャ自体にも遡り、とても古くから調べられてきました。一方で、多面体の理論が整備され、体系的な研究ができるようになったのは意外と遅く、19年代中頃からになります。
 多面体研究は最初は古典幾何学的な観点からの研究が中心だったと思うのですが、今では線形計画問題・整数計画問題などの最適化の問題や、環論・代数幾何学・表現論などの代数学分野との多彩な関係がわかっています。私自身は可換環論との関わりから多面体を調べています。特に、高次元多面体の面の個数を調べることが研究の中心です。

多様体の単体分割

 トーラスや射影平面のような図形を三角形で作るとすると、三角形は何枚必要でしょうか?また、頂点は何個必要でしょうか?答えは、射影平面の場合は三角形は9枚・頂点は6個、トーラスの場合は三角形が14枚・頂点は7個です。
 では、穴がもっと沢山あったり、もっと高次元の図形を四面体などの単体で作る場合はどうでしょうか?実はこういった問題を高次元の図形に対して調べるときには、環だとかイデアルだとかの代数の話が色々と絡んでくる、というのが2010年くらいからわかり始めていて、こういった、高次元の図形を単体分割する際に必要な頂点数などを代数的に調べる方法の基礎理論をつくる研究をしばらく行っていました。

 以下は私の研究成果というわけでもないですが、今では、546個の穴が開いた3次元の閉多様体を四面体で作るには109個の頂点が必要、342個の穴が開いた4次元の閉多様体の場合は101個の頂点が必要、390個の穴が開いた5次元の閉多様体の場合は97個の頂点が必要、なんてことがわかっています(“穴”の意味にはちょっと注意が必要ですが)。

単項式イデアルの自由分解

 多項式環のイデアルの研究は代数幾何学の基礎付けを与えるものとして研究が進められていました。一方で、1980年代ごろから、多項式環の単項式イデアルや二項式イデアルの代数的性質(特にホモロジー代数的な性質)が、多面体に関する幾何学的性質や単体分割に関する組合せトポロジーの話と様々に関連することがわかり、多面体の幾何や組合せトポロジーの道具を使ってイデアルを調べるという研究が盛んにおこなわれるようになっています。
 私自身は単項式イデアルの自由分解の話をよく調べています。これは、組合せトポロジー分野の単体的複体やより一般にセル複体のホモロジー群の話と良く関係しています。そういった組合せトポロジーの道具を使ってイデアルに関する代数の問題を解く、ということをよく考えています。